近年、原子間力顕微鏡(AFM ; atomic force microscope)による一分子イメージングなど、ナノレベルでの物質挙動を観察するための研究が盛んに行われるようになり、一分子の動きを観察することが可能になってきた(→「一分子モニタリング」)。一方で、昔から物質の観察に使われてきた光学顕微鏡は、光の回折限界により、高解像度での観察に適さないと考えられていた。しかし、マックス・プランク研究所のS.W.ヘル教授により提案されたSTED法(stimulated emission depletion 誘導放出抑制法)が実用化され、数十nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)を超える高解像度での光学顕微鏡観察が可能になってきた。STED法では、励起用の光源に加え、リング状の光を照射することにより、中心部以外の分子を基底状態に戻すことで、励起される分子を限定することが可能である。使用する蛍光分子に制限があるものの、40nm程度の分解能での観察が可能になってきた。また、EMCCD(Electron Multiplying CCD)と全反射顕微鏡(TIRF ; total internal reflection microscope)を用いて、光活性化蛍光分子観察による高分解能化を実現したPALM(photoactivated localization microscopy)も報告されている。また、ハーバード大学で開発されたSTORM(stochastic optical reconstruction microscopy)も20~30nmの観測が可能であることを報告している。