半導体の微細加工技術を用いて、微細な機械システムを構築するマイクロマシン技術であるMEMS(micro electro mechanical system 微小電気機械システム)をバイオの分野に応用したもの。2000年ごろから盛んに研究が始まった。応用範囲は広く、代表的なものに、マイクロフルディクス(micro fluidics マイクロ流体デバイスあるいはマイクロ流路ともいう)によるバイオチップやマイクロサージェリー(顕微鏡を用いる外科手術)用の手術器具などがある。また、生物分子機械様のマイクロマシン、たとえばべん毛運動に関与するモーターたんぱく質や、アデノシン三リン酸(ATP)のリン酸結合を加水分解する酵素であるATPアーゼ(ATPase)などの機能性分子をまねたものも含む。
ある種の魚は、外敵から身を守るために体の色を周囲に合わせて変化させる保護色細胞(メラノフォア)をもっており、このメラノフォアにある色素がモーターたんぱく質によって運搬されることで体の色の変化を生じさせている。北陸先端科学技術大学院大学のグループは、ダイニンと呼ばれる運搬たんぱく質を用いてこのシステムをガラス基板上に人工的に構築することによって、ATPをエネルギー源とする生体同様の色変化のコントロールに成功している。局所刺激を加えることで特定の画像の描画を可能とする「生体ディスプレー」への応用が検討されている。
その他、生物兵器やバイオテロ対策として、前線兵士への可搬型分析機器や薬液注入器など、軍事衛生関連のバイオMEMS機器も盛んに研究されている。