バイオコンピューターは、生体の情報処理の基本原理を用いて現在と同様のシリコン系の半導体で構成する場合と、実際の生体分子や細胞を使用して構成する場合の二つに大別される。前者の場合は、逐次処理であるコンピューターに生体で行われている並列情報処理能力をもたせ、機能アップを図ることを主眼とする開発が1980年代に盛んに行われた。対象は脳神経系であり、ニューロコンピューター(neuro computer)とも呼ばれ、神経回路や層構造を電子的に模倣したプロセッサーやシステムの開発につながっており、バイオエレクトロニクスもその範疇(はんちゅう)に入る。後者の場合は、その後にPCRを利用した演算をベースにするDNAコンピューターなどが提案され、近年では、DNAと酵素を組み合わせることで簡易的なプロセッサーに相当する機能を有する素子を構成し、DNA鎖を切断、結合形成することで情報を処理するタイプのバイオコンピューターも報告されている。人工生命や人工ゲノムもソフトウエアとして、あるいは演算素子としてバイオコンピューターの構成要素になるかもしれない。また、DNAの相補性を利用したDNAチップを集積化することでバイオチップを構成、並列処理を可能とするバイオコンピューターもある。