耳は聴覚(auditory sense)機能の他に平衡感覚(static sense)機能も有しており、多くの人が経験するめまいは、この平衡感覚の乱れから生じるものである。耳の機能障害に対する人工耳を用いた耳機能の回復には、聴覚機能とともにこのような平衡感覚の再現も必要である。
聴覚については、バイオニックイヤーあるいは人工内耳のように、蝸牛に電極を留置し、機能回復を果たす人工器官が実現されている(→「バイオニックイヤー」)。一方、バランスをつかさどる平衡感覚については内耳にある前庭(vestibulum 前庭迷路ともいう)という部分がつかさどっており、主として回転を検出する三半規管の機能を超小型のジャイロスコープを導入することで再現し、人工的に三次元の感知を行うことを可能にした。このような、人工三半規管、あるいは人工前庭は、三次元の動きに対する感覚を人工的に実現することで、平衡感覚機能をサポートすることを目標としている。