分子の構造や方向、さらには接続を制御することで、分子のオーダー(1n~数nm〈ナノメートル nは10-9=10億分の1〉)で制御できるナノデバイスが研究されており、半導体素子を単一の分子1個に置き換え、極限のデバイス(素子)とその集積化を目指す試みとして注目されている。分子の構造をゲート電圧(電流を制御するためにデバイスに加える電圧)などで制御することでその伝導特性を大きく変えるものや、分子の微小領域を量子ドット(電子を三次元のどの方向にも閉じ込められる構造)として働かせ、そこに電子を蓄えることで室温動作する単電子トランジスタも作製されている。電圧により分子の電気的性質が変わる有機高分子は、分子スケールで働く分子メモリー(molecular memory)としても期待される。分子デバイスに導電性単分子が直列に並んだナノスケール細線を接続する単分子配線(single molecule wiring)の可能性も示された。通常のハンダづけによる配線よりはるかに小さい分子レベルの配線接続を化学的ハンダづけ(chemical soldering)と呼ぶこともある。DNAを用いるデバイスも考えられており、DNAが特定の分子を選択する性質を利用すれば、センサーなどへの応用が考えられるほか、その選択性と多様性を利用する計算機、DNAコンピューターの可能性もある。多数の分子が集まり、ナノスケールより大きなスケールで動く分子デバイスも含め分子エレクトロニクス(molecular electronics)と呼ぶことも多い。