電子が三次元のどの方向にも量子サイズ効果で閉じ込められた構造を量子ドットといい、量子箱と呼ぶ場合もある。ナノリソグラフィーや自己組織化を用いて半導体ナノ構造やカーボンナノ構造を作製することで実現されるほか、さまざまなナノ粒子も量子ドットとしての特性を示す。容量が十分に小さいことで、蓄積される電子の数が数えられるほど少数になり、クーロンブッロケードという現象が現れるほか、三次元的な閉じ込めによるエネルギー準位(電子が量子ドットの中で取れるエネルギー状態)の形成を反映した特性も現れる。得られる特性は閉じ込めの対称性に由来する独特な構造を示し、量子ドット中の電子の数により、あたかも原子の周期律表に対応するような振る舞いを示すことから、人工原子(artificial atom)と呼ばれることもある。サイズの極めて小さい量子ドットでは、量子閉じ込め効果によるエネルギー準位の変化が顕著になり、発光波長の大きなシフトも観察されている。