かつての石油ショックの際に食糧危機を回避する目的で、畜産ではなく、大豆たんぱく質から作製される「大豆肉」が登場した。培養肉はそれとは異なり、培養液によって幹細胞やES細胞を増殖させることで作製する「培養細胞肉」のこと。作製するには、越えなければいけない山がいくつかあり、決して容易ではない。たとえば、(1)未分化のまま長期間増殖させ、細胞数を増やさなければならない。(2)増やした培養細胞を高い確率で筋肉に変えるための分化制御技術を確立しなければならない。(3)血清などは培養効果が高いが、そうした動物由来の成分をいっさい使わないうえで、人工的に合成した培養液(有効成分)や細胞育成用の培地などの培養条件を低価格化しなければならない。これらはいずれもハードルが高い課題であるが、大豆肉のときもそうであったように、培養肉に対するよいイメージをいかに作れるかが成功の可否を握っている。