さまざまな組織の細胞へと分化できる能力を持つ細胞で、万能細胞(universal cell ; master cell)ともいう。幹細胞には、胚性幹細胞(ES細胞 embryonic stem cell)と体性幹細胞(somatic stem cell)がある。胚から採取したものが胚性幹細胞であり、神経幹細胞や造血幹細胞などの体性幹細胞と区別される。通常、成長した細胞は特定の機能を有し、分裂しても他の細胞にはなり得ない。たとえば、皮膚の細胞は皮膚にしかならないが、万能細胞はどの臓器にも分化できる可能性をもち、移植医療に代わる医療・治療法として注目される。このほかにも2007年末、ヒトの体細胞からES細胞に類似したiPS細胞の樹立に成功しており、再生医療による治療への期待が高まっている。一方、iPS細胞を使用する際の腫瘍化のリスクを避けるため、線維芽細胞などから直接目的の細胞に変化させる直接誘導や、皮膚や骨髄中に含まれるミューズ細胞(Muse細胞 multilineage-differentiating stress enduring cell)による遺伝子導入を必要としない幹細胞誘導などの研究も盛んに進められている。