近年、生体試料を透明化することで、骨などを可視化することができる透明組織標本が、その構造と色の美しさから、鑑賞目的でも注目されている。Scaleは、理化学研究所脳科学総合研究センターの宮脇敦史チームリーダーらが開発した、脳組織をはじめとするさまざまな生体組織をゼリーのように透明化する透明化水溶性試薬(「Scale」の「l」は斜体で表記)。生体試料を透明化することにより、今まで観察が困難であった神経回路などを可視化できるようになる。ホルマリンで固定した脳などの生体試料を、尿素と界面活性剤、グリセロールを原料とする溶液に浸すことにより透明化させる。この「透明化処理」により、試料内の光散乱が最小限に抑えられるため、透明度が高い試料を作製することが可能になる。蛍光たんぱく質で標識した神経細胞について、蛍光の観察深度が浅い一光子励起の蛍光顕微鏡でも深さ2~4mm程度まで観察可能となり、脳内の神経回路を可視化し、画像として再構築することができている。透明化処理に有機溶剤を使用しないため、毒性が低く、透明化後の免疫組織観察も可能である。さらに、透明化後に再びもとの状態に戻すことが可能であり、今後、試料となる生物を生きたまま透明化できる可能性が期待されている。