ナノスケール(nm : 10-9m=10億分の1mレベルのスケール)の細線であるナノワイヤを利用した光半導体デバイス。半導体のナノワイヤは、高価な化合物半導体材料を汎用的な基板の上に少量かつ効率的に成長させることができるため、安価で高効率な太陽電池への応用が期待されている。最近、直径180nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)のインジウム・リン(InP)ナノワイヤを用い、ワイヤへの光の効率的な捕獲効果を活用することで、13%以上の変換効率を有する太陽電池が実現された。この効率は、広い面積にインジウム・リンを配して作製した通常のInP太陽電池の効率に匹敵している。ワイヤが表面全体の12%しかカバーしていないことを考えると、将来的にはナノワイヤ太陽電池(nanowire solar cell)が通常の構造の太陽電池をその性能でしのぐ可能性がある。さらに、ナノワイヤは線状でその断面積が小さいために、本来であれば原子間隔の違いにより多量の欠陥が入ってしまい高品質な結晶が得られないような構造を組み合わせることも可能になる。このような特徴を利用することで、異なる波長の光を吸収するナノワイヤ太陽電池をタンデム型に積層することもでき、さらなる効率の改善が期待される。太陽電池の機能とは反対に、電流を流して光を得る発光デバイスとしてもナノワイヤは大変魅力的であり、青や緑などの多くの発光デバイスの研究が進められている。