単細胞のアメーバは嫌いな刺激(罰)を避けながら餌(報酬)を最大にするように、自ら環境に適合した解を求めようとするが、これらの解は意外にも数学的に難しいといわれている問題をうまく解いている場合がある。これらを用いたアメーバコンピューター(amoeba computer)あるいは粘菌コンピューター(mouldy computer)が注目を集めているが、正解に向かう秘密は、おおむね規則に従うものの、ときどき柔軟に試行錯誤を行うことにある。アメーバでは計算できる変数に限界があることから、同様の機能をもったナノ構造体の出現が期待されている。例えば、近接して配置された量子ドット(量子サイズ効果によって電子が三次元のどの方向にも閉じ込められた構造)間で生じる近接場光を介したエネルギーの移動は、アメーバの確率的な行動に類似していることが見いだされており、難しい問題を解くのに役立つ可能性が理論的に示された。このような、意思決定に対応するような動作をするナノ構造体は単なるナノ構造体とは区別され、知的ナノ構造体などと呼ばれている。