立体図形のデータから立体模型を出力する3Dプリンター(三次元プリンター)では、コンピューターを用いた設計システムCAD(computer aided design)のデータをもとに、樹脂などを薄く積層していくことで立体物を作製する。昨今、生分解性の材料の発達とともに、それらを3Dプリンターで扱い、医療面で応用しようという試みが進んでいる。iPS細胞を利用した再生医療などにおいては、細胞を立体的に成長させていく必要があるため、その立体形状の骨格を形成する三次元の足場材料の必要性がますます高まっている。中でも、臓器を立体培養するためには、ナノサイズ(10億分の1mサイズ)で加工した繊維状の高分子材料を生分解性材料の構造体に付加することで、細胞が成長する足場を形成する必要がある。このような医療面における三次元構造体を形成するうえで3Dプリンターは極めて有効であり、足場をつくって複数の細胞塊を同時に培養する容器の作製や、それを応用した人工臓器などへの展開も期待されている。2013年5月、アメリカのミシガン大学では、重度の気管支の病気をもつ赤ちゃんに対して、3Dプリンターを使って生分解性適合材料のポリカプロラクトンで作製した「人工気管」が移植されている。これは、2~3年後には溶けてなくなることで、組織の再構築に向けた足場材料としての役割を果たすものとなる。このように、足場材料としての利用だけでなく、スフェロイド(spheroid 細胞塊)状にした細胞をコンピューター上に設定した3次元構造にしたがって立体的に配置していくなどのバイオ分野への応用が広がっており、バイオ3Dプリンターとして臨床応用への研究が進んでいる。