光が物体に作用する電磁気学的な圧力を利用して微粒子を捕捉し、所望する場所に運ぶ技術が注目されている。この電磁気学的な圧力は光強度の空間的な勾配に比例するため、誘電体微粒子は、電場の一番強い集光された光の焦点付近へ引き寄せられるため、顕微鏡下で細胞や微粒子などを観測しながら、取り上げ、移動して離す操作ができる。ピンセットで物をつかみ離す操作との類似性から光ピンセットと呼ばれており、すでに市販されていて、生物学の実験などで広く利用されている。なお、誘電体(dielectric material)とは、電気的に中性でありながら、電場をかけると部分的に電荷が生じる物質をいう。この光ピンセットの原理と金属ナノ構造体に生じるプラズモン(光が金属に照射された際に生じる金属表面での電子振動 →「プラズモニクス」)による光増強効果を組み合わせると、光の波長よりはるかに狭いナノメートルレベル(10億分の1mレベル)の局所空間へ、同レベルの超微細粒子を捕捉することが可能になる。この新型光ピンセットでは、細胞やウイルスよりもはるかに小さい高分子やDNAを捕捉し、自在に操作することが期待される。