あらかじめiPS細胞を作製して保存しておくことで、必要とする研究者に対し、目的に応じたiPS細胞を迅速に提供するための仕組み。細胞や臓器移植に際し、大きな問題となるのは拒絶反応(rejection)である。拒絶反応は、抗原と、抗原に特異的に結合して反応を示す抗体とによって引き起こされる免疫拒否反応である。自身の有する抗原であるHLA(human leukocyte antigen)、つまりヒト白血球型抗原の型と異なるHLA型の人から移植を受けた場合、「異物」と認識されることで、拒絶反応が生じる。そのため、移植には、HLAの型を合わせることが必要である。HLAは両親から受け継がれ、その組み合わせは数万種類以上存在するが、父親と母親から同じHLA型を受け継いでいる場合、これをHLAホモ接合体(HLA homozygote)といい、拒絶反応が起こりにくいことが知られている。そのため、免疫拒絶反応を起こしにくいHLAホモ接合体の細胞をもつ健康な提供者からiPS細胞を作製し、保存することで、国内外の医療機関や研究機関に対して、必要に応じて提供することが可能になる。京都大学や日本赤十字社が中心になって2012年から本格的に取り組みが始まり、数万種に及ぶであろうHLA型に対して、その一つひとつに対応するiPS細胞の作製を目指していき、5年以内に日本人の約半数をカバーし、10年以内に8~9割をカバーする計画。