力学的刺激により材料の色が変化する現象で、この現象が生じる材料をメカノクロミック材料(mechanochromic material)と呼ぶ。近年、圧縮や引っ張りなどの機械的刺激に応答する発光性有機分子材料の発見が相次いでいる。力学的刺激による分子鎖の切断など、分子構造の変化による色の変化を利用するものが多く、外から容易に見ることができる色の変化で機械的な変化を測定できることから、構造物のゆがみの測定や経年的な劣化の検出などに応用することが期待されている。発光性の有機化合物を意図的に準安定状態に集合させ、機械的刺激に敏感な材料を形成する試みもあり、一部分に刺激を与えただけで結晶構造が順次変化し、試料全体の色が変化するものもある。
別のメカニズムとして、構造色の特徴を利用したものがある。構造色は周期的構造に光が反射される際の干渉効果を利用して発色するものであるが、ゴムやゲルなどの柔軟な材料にこの機構を埋め込むと機械的刺激により色が変わる材料が作製できる。可動する周期構造を微細にすることで動作を高速化できることも報告されている。このような色の変化は自然光を利用するため、明るいところほど見やすくなり、発光のエネルギーを消費しない特徴もある。電気的信号で機械動作を起こし、同じメカニズムを用いて、これを色の変化に結びつける装置も考えられる。プロジェクターなどに使用されている可動式マイクロミラーも広い意味で機械的な変化を利用した光制御システムとなっている。