リンの同素体の一種である黒リンから単層の原子シートを剥離して形成されるフォスフォレンが、新しい二次元原子層材料として脚光を浴びている。フォスフォレンは、リン原子が単原子の厚さでシート状になった物質であるが、グラフェン(炭素がベンゼン環構造を組み平面状に並んだもの)のように平面になるのではなく、シートを構成する原子が波打つゆがんだ構造をもっており、バンドギャップ(電子が存在できないエネルギー領域)を有している。このため、トランジスタを作製したときに、通常のシリコンを用いたトランジスタのように電流のオフ状態を作ることが容易であり、原子層を利用した高性能トランジスタに向けた材料として期待されている。空気中での安定性に問題があるため、保護膜などが必要になるが、バンドギャップに対応した光子を吸収することから、太陽電池への応用も考えられている。フォスフォレンのバンドギャップは電界で制御できることが実験で示され、ゼロバンドギャップも実現されている。