光を用いたリソグラフィーは加工に広く利用されているが、通常は、使用する光の波長で決まる最小寸法より小さい構造は作製できない。この限界を超えて微細な構造を作製する重要性が特に三次元ナノ造形の関係で重要になっている。一つの方法は構造を作るのに二光子プロセスを用いることである。光子が二つ来てはじめて反応が起こるような二光子プロセスは非線形性が強いため、広いビームの一番強度の強い部分だけに敏感に反応する。この場合は通常のビーム径より微細な構造が可能になる。二つの光子の位相情報まで利用して、量子的な干渉効果を利用するエンタングルメント・リソグラフィー(entanglement lithography)ではさらに微細な構造が実現される可能性がある。波長限界を打破したこれらのリソグラフィー技術は、波長限界を超えた顕微鏡にも応用可能である。2014年にノーベル化学賞を受賞した超解像蛍光顕微鏡(STED ; stimulated emission depletion)の原理を利用して、反応を促進する通常の集光したビームとドーナツ状に集光した反応を抑えるビームを重ねることで、ドーナツ状のビームの中央だけで反応させ、光波長の限界を超えたリソグラフィーを行うダブルビーム・リソグラフィー(double beam lithography)も検討されている。