「ポア」は英語で「細孔」の意味で、ナノポアはナノメートル(nm:10-9=10億分の1m)サイズの超微細な穴を意味している。細孔をはさんで電解質を満たしておくと、その細孔を通してイオンの流れによる電流が生じる。何かがこの穴をブロックするとイオンの流れが阻害され電流が減少する。この単純な現象を利用して小さな物質の流れをセンシングしようとする装置が作られており、マイクロメートル(μm:10-6=100万分の1m)サイズの細孔で細胞の検出などが行われてきたが、ナノメートルサイズの細孔を用いた単分子センシングの可能性が着目されている。特に、DNAのサイズに近いナノポアでは、DNAが一つ一つ通過することがセンシングされる点が興味深い。生体高分子は電荷を有するものが多いが、DNAの電荷状態は塩基配列により異なるため、電荷を帯びているナノポアを用意して、DNA通過にともなうイオン電流変化を測定することで、ナノポアを通過するDNAの塩基配列まで読み出そうという試みもなされている。
DNA以外のたんぱく質などへの応用も期待されている。ナノポアとしては、窒化シリコン薄膜やグラフェンなどの固体に加工技術を用いて微細な細孔を空けたものから、細胞膜に細菌由来の毒素で狭いところでは2nm以下の細孔を空ける生物型ナノポアもあり、両者を組み合わせたようなものも検討されている。