大阪大学の西田幸二教授らのグループが開発した、同心円状の帯状構造からなる二次元組織体。今までヒトiPS細胞から、眼の後ろ側となる網膜や網膜色素上皮などを誘導する技術は報告されていたが、角膜や水晶体など眼の前側を含めた眼全体の発生を再現することはできていなかった。同グループは新たな二次元培養法(培養皿上で細胞を単層培養していく方法)を開発することで、ヒトiPS細胞を眼の構成細胞へと分化させ、同心円状の四つの帯状構造からなるSEAMを作製し、眼の前までも含めた眼全体の発生を二次元的に再現することに成功した。中心となるのは眼の中枢神経にあたる神経外胚葉で、その3番目の帯状構造から前駆細胞を単離することで、眼の角膜上皮組織の細胞シートを誘導することに成功し、動物の失明モデルへの移植によって視覚の回復を確認した。本法は、角膜上皮、網膜、水晶体上皮など、眼の主要な細胞群を発現させ、眼全体の発生再現の可能性を示唆するとともに、今までドナー角膜移植に依存していた角膜上皮疾患の治療に有効となることが期待される。