ベンゼン環(炭素原子6個による正六角形構造)が、その辺を共有しながらベルト状に巻いた形状をもつカーボンナノ材料(carbon nanomaterials)の総称。1954年に理論的に提唱されていたものの、ベンゼン環は平面状につながる性質が強いため合成に成功した例はなく、2016年になって日本のグループが世界に先駆けて合成に成功した(論文発表は17年)。合成されたカーボンナノベルトは12個のベンゼン環でベルトが構成されており、その構造はX線やラマン散乱で確認され、赤色の固体である。カーボンナノベルトはそれ自体、新しいカーボンナノ材料として魅力的であるが、カーボンナノチューブの一部をベルト状に切り出した構造である点も重要である。カーボンナノチューブは革新的なナノ材料として多くの研究がなされてきたが、その巻き方により、金属であったり、半導体であったりとその性質が大きく異なり、一つの狙った構造を選択的に作製することは不可能であった。カーボンナノチューブの部分構造であるカーボンナノベルトを合成し、それをもとにナノチューブを成長させれば、単一構造のカーボンナノチューブを合成できる期待があり、カーボンナノチューブの製造技術にも大きなインパクトをもたらす可能性がある。なお、辺を共有しながらベンゼン環のみで構成されるカーボンナノベルトに対して、炭素・炭素間の1本の結合でベンゼン環とベンゼン環をつなぐ部分が残っている「輪っか」状のカーボンナノ構造もあり、これはカーボンナノリング(carbon nanoring)と呼ばれている。