海洋深層水循環ともいう。現在の地球では暖かくて塩分濃度に富んだ表層海流は大西洋を北上し、北欧地域に温暖な気候をもたらしている。この海水は高緯度地域で水温が低下するため比重が大きくなり、深層水中へ潜り込んでいく。潜り込んだ海水は大西洋を南下し、南極海からインド洋を巡り、北太平洋でわき出し、インド洋を通過して大西洋へと流れ込み、循環を閉じる。こうした海水の循環の時間スケールは、約2000年である。現在大気中の二酸化炭素濃度が増加傾向にあり、気候の温暖化が進むものと考えられている。気候が温暖化すると表層海水の比重は小さくなるため、北大西洋地域における深層水の形成は停滞するものと予測されている。こうした海洋循環の変化によって北大西洋地域の気候は大きな影響を受けるが、海洋深層水の循環が停滞すると炭素循環も大きく乱れ、大気中の二酸化炭素の増加傾向に拍車をかけることになる可能性も示唆されている。2005年にイギリスの研究者がすでに地球温暖化の影響で北大西洋における海洋循環が停滞し始めているという分析データを発表して注目された。