隕石母天体のなかで融解してマグマが形成され、マグマが冷えて固まった火成岩の特徴を示す代表的な隕石グループ。コンドリュール(球状粒子)を含まないことから、より一般的な分類ではエコンドライトに属する。酸素同位体比の組成から同一の母天体に由来するものと考えられている。HEDは、ホワルダイト、ユークライト、ダイオジェナイトという3つのエコンドライトの分類群の頭文字を示す。ユークライトはマグマが隕石母天体の表層近くで冷えて固まった玄武岩的な岩石組織を示す。鉱物主は、ピジョン輝石と斜長石からなる。ダイオジェナイトはマグマだまりのなかで、晶出した斜方輝石が沈殿してできた集積岩である。ホワルダイトは、天体衝突でできた角礫(かくれき)の集合体で、ユークライトとダイオジェナイトの岩片の混合物である。ユークライトやダイオジェナイトが角礫化したものもある。これらの隕石は、小惑星帯で2番目に大きいベスタと呼ばれる小惑星からやってきたと考えられている。ベスタに由来すると考えられている隕石には、このほか石鉄隕石に分類されているメソシデライトがある。イビチラ隕石やノースウェストアフリカ011隕石(NWA011)などは、ユークライトとよく似た火山岩組織をもつ隕石である。これらの隕石の酸素同位体組成はHED隕石とは明らかに異なり、別の母天体からやってきた珍しい隕石とされている。