南米エクアドルからペルー沿岸では例年12月から翌年3月にかけて海水温が上昇する。特にクリスマスころによく起こり、折からバナナなどの収穫期に当たるため、神の恵みに感謝をこめてエルニーニョ(スペイン語で「男の子」または「神の子・キリスト」の意)と呼ばれていた。この現象とは別に、水温の上昇がペルー沿岸だけでなく日付変更線付近の赤道太平洋にまで広がることが数年おきにある。これをエルニーニョ現象と呼ぶようになった。気象庁ではエルニーニョ監視海域の5カ月平均の海面水温が平年より0.5℃以上高い状態が6カ月以上続いた時をエルニーニョ現象と定義している。また、タヒチとダーウィン(オーストラリア)の間の海面気圧差で代表される全球規模での気圧の振動(南方振動 : Southern Oscillation)が古くから知られていた。この両者は相互依存関係にあることから、エルニーニョの頭文字のENと南方振動の頭文字のSOをとり、連結してENSO(エンソ)と呼ぶようになり、熱帯太平洋域での大気―海洋結合系の変動を表すこととなった。昔は正常な状態とエルニーニョ現象の状態があると考えられていたが、最近では、エルニーニョ現象と反対の現象が存在すると考える人が多くなり、西太平洋熱帯域に温かい水がたまる現象をラニーニャ(La Nina 西)と呼ぶようになった。この命名の由来は、エルニーニョが男の子を意味するのに対して、女の子という意味である。近年では、熱帯太平洋域には、TAO/TRITONブイシステムが整備され、リアルタイムでデータが送られてきており、また、人工衛星による海面水温・海面高度の観測が頻繁に行われるようになった。同時に、大気海洋結合モデルが進歩し、各国の気象庁で、1年程度先のエルニーニョの予測が行われている。