海面気圧の長年平均からのずれがシーソーのように北極地域と中緯度地域とで正反対に変動する現象。北極地域のずれがマイナスで中緯度地域がプラスのときを「北極振動が正である」といい、北極地域から寒気が流れ出しにくく暖冬になる。逆に北極振動が負のときには寒気が大量に流れ出して寒さの厳しい冬になる。近年、北極振動が正になることが多いのは地球温暖化が影響しているという見方もある。また、北極振動という実態はなく、従来から知られている北大西洋の南北の振動、すなわちアイスランド低気圧が発達するときはアゾレス高気圧の勢力も大きくなるという北大西洋振動など、いくつかの振動が重なり合った見かけ上の現象ではないかとの議論もある。北極振動は北緯20度以北における海面気圧のパターンの変動のことであり、北極地域に限った現象ではないので「北極」振動という用語は誤解を招きやすいかもしれない。いずれにしても北極振動は天候の変動の監視に有効であり、北極寒気の動向に研究者の関心を向けた功績は大きい。