南極大陸周辺の春(9~10月)に、成層圏のオゾンの量が著しく減少し、オゾンの分布図で南極を中心に穴があいたような状態になること。原因としては、冷媒として使われているフロンなどが挙げられる。オゾン破壊のメカニズムとして、塩素原子などによる触媒サイクルは知られていたが、成層圏では安定な化合物(リザバー)に取り込まれていると考えられていた。ところが、南極上空の冬に形成される極成層圏雲(PSC)の氷の上での不均一化学反応が重要であることが実験的にも観測的にも証明された。この反応により、春に太陽光が差し込むと塩素原子が放出されてオゾンが破壊される。この対策のために、国際的にフロンを規制することとなり、1987年に、モントリオール議定書が締結され、90年のロンドン会議で、15種のフロンが2000年までに全廃されることが決まった。北極域では、南極ほど温度が低くならないのでオゾンホールがないといわれていたが、年によってはオゾンホールのような現象が見つかったという報告もある。フロンの規制に伴って、オゾンホールが今後どのように回復してくるかについては、成層圏化学モデルを用いたシミュレーションが行われており、オゾンホールの回復を示唆している。ただ、地球温暖化が進行することで成層圏が寒冷化することが考えられ、今後どうなるかは依然として不確定さが残る。