気候システム(climate system)は、大気や海洋、海氷、雪氷、地表面などのサブシステムが複雑に相互作用している膨大な自由度を持つシステムである。たとえば、大気と地表面(海面および陸地面)との間では、運動量・熱・水をフラックス(流束)の形でやりとりしている。この気候システム全体の変動を表現するためには、これらの気候システムの変動を表現する物理的な法則を、数値的に計算できるように定量的に表現する数値モデル(numerical model)を作成する必要がある。サブシステムである大気を表現する大気大循環モデル、海洋を表現する海洋大循環モデル、海氷モデルなどを結合して気候モデルを作成するのが普通である。これらのサブシステムのモデルを結合するのは、それほど、簡単ではない。たとえば、大気大循環モデルと海洋大循環モデルの格子点は一致しないのが普通であり、海陸分布の表現に違いが出てくる。そこで、両者のモデルの間でエネルギーや水などが保存できるように気を配らなければならない。また、大気大循環モデルと海洋大循環モデルを時間積分する時間ステップも同じではない。そこで、大気と海洋などの格子点の違いや対応する海陸分布の違い、時間の違いなどを考慮して、大気と地表面の間のフラックスを整合的に計算するカップラーというプログラムを使うようになってきた。これらの気候モデルを用いて、主として、気候システムの長期変動や地球温暖化のシミュレーションなどが行われている。このためには、長期間の時間積分や大気放射の計算精度を上げる必要があり、膨大な計算資源が必要になる。一方、エルニーニョの予測に関しては、時間スケールが1~2年程度であるので、海洋深層の変動がそれほど効かないし、熱帯域の大気海洋の相互作用が中心なので、大気と海洋のみを結合したモデルが使われており、大気海洋結合モデルと呼ばれている。