2011年の秋を中心に、アユタヤからバンコクに及ぶ広い地域を襲った洪水のこと。気象庁の記者発表によれば、11年は、インドシナ半島では、6月から9月にかけて平年より降水量の多い状況が続いた。たとえば、北部のチェンマイでは、4カ月の雨量が921ミリ(平年比134%)、バンコクでは、1251ミリ(同140%)、ラオスの首都のビエンチャンで、1641ミリ(同144%)が観測されている。降水量は、インドシナ半島全域で、平年の1.2倍から1.8倍であった。さらに、降水は10月も続いた。しかしながら、これらの降水量の増加が大洪水を引き起こした点については、多くの要因があると思われる。タイでは、6月から9月は雨期であり、乾期に備えて水をためる操作を行う。11年は、9月の前半にはダムがいっぱいになり放流をせざるを得なかった。河川が海に水を流す容量には限りがあり、これを超えて放流すればあふれるのは当然である。一方、バンコクは、もともと、海岸近くのデルタ地域であり、水の都として知られている。近年は、地盤沈下もあり、1995年にも大洪水が起きていた。アユタヤなどは、洪水などの時に水をあふれさせる緩衝地域として想定されていた地域に工場団地がつくられるなど、洪水対策と無関係に開発がすすめられたことも原因の一つとして挙げられる。また、キングスダイクと呼ばれるバンコクを取り巻く堤防が建設されていたが、堤防の一部が建設されていないなど、洪水対策も遅々として進展しなかった点も原因に挙げられる。