1987年にアメリカのW.S.ブロッカーが提唱した、全地球的な海水流動のシステム。炭素同位体年代測定によって、北大西洋深層水の年齢が最も若く、ここを出発点として、太平洋で浮かび上がるまでに、約2000年程度の期間を要することが判明した。北極海から北大西洋北部まで張り出して氷結する海氷は真水だけが凍り、塩分を海中に吐き出す。付近の表層水は高塩分となって沈降し(→「海水の沈降」)、南方から湾流のような暖流を誘い込む。大西洋を北上する表層水は、低緯度海域を通過する際に水分が蒸発して高塩分となり、高緯度海域では冷やされ、高密度で重たくなり、沈降の程度を増す。沈降した水塊は南下する深層水となる。南大西洋まで戻ると、左向きのコリオリ力のため、アフリカ大陸南端の喜望峰の南で東に流れ、一部はインド洋を北上する。残りは南極海の深層を東流し、冷やされつつ、太平洋南方に達してから北上する。インド洋でも太平洋でも、風力の影響で流れる表層水の動きにつれて、吸い上げられ上昇した深層水は、温暖な表層水と混じり、低塩分の浅層水として南下する。まもなく西に向きを変え、今度は喜望峰の南を西流して大西洋に戻り、循環の輪を閉じる。