深海底に沈んだ鯨の死体を栄養源に生息する生物群集。1987年にアメリカ・ロサンゼルスの西、サンタカタリナ海盆の水深1740mで、ほぼ完全な鯨骨に群がる生物群集が発見された。日本近海でも鳥島の東150kmの鳥島海山の頂上付近の水深4000mで発見されている。世界で知られているのはこの二つのみである。この生物群集は鯨の骨の中に含まれる脂肪酸が酸素に乏しい環境で分解してできるメタンを基調にしている、一種の化学合成生物群集である。熱水や冷湧水がストップしたとき、生物は死に絶えるのか、それとも別の熱水などの飛び石を伝って移動するのか、どのようにして海底を伝搬するのかはよくわかっていない。鯨骨はこの飛び石仮説を検証するのに適している。鯨骨生物群集に関しては最近、座礁によって死んだ鯨の骨を海底に設置して新しい生物群集を作って観察する試みが日本で始められた。実験室でも鯨骨にホネクイハナムシなど特有の生物が生息し始めた。