太陽光が届かない深海底で、メタンや硫化水素などから化学反応によってエネルギーを得るバクテリアを第一次生産者とする生態系のこと。海洋生物のほとんどが太陽光線の恩恵を受けているため、多くが水深200m以浅の海底に生息している。海洋の表層では植物プランクトンが光合成によって増殖し、それを動物プランクトン、さらに大型の生物が次々に利用する食物連鎖(光合成生態系)が地上と同様に形成されている。ところが1970年代の終わりから80年代の初めに深海生物群集(deep sea animal community)が相次いで発見され、それらが化学合成生態系を形成していることがわかった。海底熱水系周辺のエビやカニ、ハオリムシなどから成る熱水噴出孔生物群集、海底の断層からしみ出すメタンや硫化水素を使った、シロウリガイを主とする冷湧水生物群集、鯨の骨を使った鯨骨生物群集の3種類が知られている。