海嶺の中軸谷や周辺には300℃を超える熱水が、煙突のような形をした沈着物の筒状の孔(チムニー chimney)から噴き上がっている場所がある。噴出して黒色の煙を出す熱水をブラックスモーカーといい、白色のものはホワイトスモーカー(white smoker)という。熱水は海水が地下で溶かし込んだ銅、鉛、亜鉛、銀、鉄、マンガンなどの金属硫化物を含む。周辺は、このような金属が濃縮・沈殿し熱水マウンドを作り、また硫化水素やメタンを餌とするバクテリア、貝、イソギンチャクなどから構成される特異な生物コロニーも繁殖している(→「熱水噴出孔生物群集」)。アメリカの潜水調査船「アルビン」号が1977年、ガラパゴス海嶺中軸部で熱水部と生物のコロニーを発見、79年、北緯21度のメキシコ沖の東太平洋海膨中軸谷の水深2500mで初めてブラックスモーカーを発見した。その後、多くの場所で発見され、背弧海盆でも「アルビン」号により87年マリアナトラフの水深4000mで発見された。89年、海洋科学技術センター(現在は海洋研究開発機構)の「しんかい2000」が沖縄トラフの伊是名海穴(いぜなかいけつ)でブラックスモーカーを発見した。