人工衛星による海洋観測研究は、その対象範囲が海表面付近に限定されるとはいえ、従来、点・線的な観測に終始していた海洋観測に、面的かつリアルタイムあるいはリアルタイムに近いデータの収集を可能とし、海洋の実像に対する理解を格段に進歩させた。海洋環境の理解の増進など、その影響は計り知れないものがある。海洋観測研究に利用される人工衛星の中には、海洋観測を主目的とするものと、本来は地球観測衛星であるが、その対象の中に海洋観測も併せ含まれるものとがある。例えば、海洋の表層温度を測定する人工衛星からは、海洋表層の温度(SST:sea surface temperature)以外にも沿岸の砂や泥の拡散、プランクトンの異常発生、海流の流れなどが読み取れる。海上保安庁では黒潮の水温の分布などから、その流路の予想を出している。また雲の分布の様子も観察され、アルゴフロート(→「アルゴ計画」)など漂流する観測機器をモニターすることができる。