地震で大きな変形を受け、破砕してぼろぼろになった泥岩のこと。地球深部探査船「ちきゅう」によって南海トラフ地震発生帯での深海掘削を行って得られた泥岩層の中には、このような泥岩が見られた。1999年の台湾の地震では付加体の中の分岐断層から、マッドブレッチャが断層の上にだけ分布していることがわかった。南海トラフの掘削で得られたマッドブレッチャは、炭素や鉛の同位体によっておおよそ1944年の東南海地震と同じ年代のものであることがわかり、東南海地震の痕跡と目されている。マッドブレッチャは肉眼観察ではわかりにくいが、X線CTによって明瞭に判別できる。過去の地震域でこのようなマッドブレッチャがいくつも発見されれば、巨大地震の履歴が正確に編年でき、今後の巨大地震の発生に大きな手がかりを与えることができる。