海洋の表面の有光層にはたくさんの微生物が生息している。特にプランクトン類はほかの大型の生物の餌となっているために、第1次生産物と呼ばれている。これらのプランクトン類が太陽のエネルギーによる光合成作用によって大量に生産され、死骸が海水中に吸い込まれていくように沈降していく現象を生物ポンプと呼んでいる。生物ポンプは現象としてはマリンスノーと同じである。海洋の水深約200メートルまでは太陽に光が届くために、植物プランクトンなどは光合成を行い、その死骸は海水中を沈降して深海へと落ちていく。この過程で、光合成によって生成された有機炭素が海水中を循環することになり、地球規模での炭素の循環の一端を担っていることとなる。生物ポンプの能力を調べるために、マリンスノーの量をいろいろな深さで調べる漏斗のような形をしたセディメント・トラップが考案された。これをさまざまな海域や深度に長期間設置して、月ごとのマリンスノーの量などが観測されている。生物ポンプの能力は、低緯度の赤道地域や高緯度の極地域などで大きく異なる。また季節によってもその量が大きく変化することや、周辺の海水に含まれる鉄の量に相関があることがわかっている。