深海湾とは日本にある水深200メートル以上の湾のことである。日本の海岸にはおよそ50の湾があるが、そのほとんどが水深200メートルより浅い。湾の成因には、火山の噴火口やカルデラ、砂嘴(さし)が閉じたもの、断層運動による陥没でできたものなどがある。ところが日本には水深が1000メートルを超える深海湾が3つだけ存在する。相模湾、駿河湾そして富山湾である。これらの湾に共通するのは、プレートの境界そのものか、境界に近いことである。相模湾には北アメリカプレート(NA)とフィリピン海プレート(PHS)の境界が、駿河湾にはユーラシアプレート(ES)とPHSの境界が通っている。富山湾には近くにユーラシアプレートと北アメリカプレートの境界が通っており、湾の中には日本海が拡大を始めた際のリフト(谷上のくぼ地)が通っているために深い。深い湾には浅瀬にすむ生物以外に深海生物も生息できる。そのため、ほかの湾にくらべて生物の種の数が極めて豊富である。特に相模湾には日本の海洋生物のうちの約17%が生息することが明らかになっている。日本の排他的経済水域(EEZ)の面積が日本列島の10倍以上もある440万平方キロメートルであることを思えば驚くべき量である。その原因には湾の深さ、火山活動、地震活動による断層、陸からの堆積物の流入、海流や淡水の流入、地下からの湧水の湾への流入などがあげられる。