紀伊半島沖から遠州灘沖にかけて沖合300~400kmまでの広範囲にわたって生じる、周辺より数℃から10℃ほど水温の低い水塊のこと。紀州沖冷水塊、遠州灘沖冷水塊などともいわれている。黒潮の大蛇行の折に現れる、陸側から張り出す冷たい水塊で、大きいものでは半径200kmもの円形や楕円形になる。冷水塊が発生すると黒潮は大きく蛇行することが知られている(黒潮大蛇行)。大蛇行の原因はよくわかっていないが、黒潮に直交する伊豆・小笠原弧が障害になっている、黒潮の流量、海岸線の形などが原因として考えられている。伊豆・小笠原弧は数10㎞おきに火山島が南北に並んでいて全体として黒潮に対して直交する浅瀬となっているために、黒潮はこれに沿って南下する。間を抜ける黒潮は常磐や金華山沖から東へと移動する。黒潮の流路に沿った海岸の地形も数10kmおきに半島が張り出していて、足摺岬、室戸岬、紀伊半島などが黒潮の障害になっている。このような地形的な影響と、陸から低温の淡水を運ぶ四万十川、吉野川・淀川、紀伊の三川(揖斐川、長良川、木曽川)、天竜川、大井川、富士川などの大きな河川からの流入も関係があるかもしれない。特にアルプスから流れる静岡県の河川は冷たい淡水を大量に運んでいる。