ウィリアム・ハーシェル(William Herschel)が1789年に発見した土星の第2衛星。土星の衛星で5番目に大きく直径約500キロメートルの氷に覆われた天体。現在、土星には60を超える衛星が確認されているが、最大の衛星タイタン(Titan)と並んでエンケラドスが近年特に注目を集めているのは、地球を除く太陽系内の天体中で、生命の存在の可能性が最も高い天体の一つと予想されているからである。NASAとESAの土星探査機カッシーニ(Cassini)は、2005年にエンケラドスの南極付近の割れ目、タイガーストライプからガスと氷粒子が噴出している様子を撮影した。エンケラドスから放出された氷粒子は、土星の外側の環であるEリングを形成している。カッシーニからのデータを解析することにより、地下の比較的浅い場所に地下海が存在することが明らかになった。これは、土星との潮汐(ちょうせき)作用によって内部が潮汐加熱されたためと考えられている。さらにカッシーニは噴出している氷粒子中を通過し、噴出物には有機物が含まれていることも明らかにした。15年、東京大学の関根康人博士らの研究グループは、カッシーニが検出した微粒子中のナノシリカの成因を分析した結果、熱水環境が地下に現在も存在することを発表した。このため、エンケラドスの地下海には、一般的に生命誕生の3大要件とされる液体の水、有機物、適温がそろっており、微生物が存在する可能性が指摘されている。