科学技術に関する参加型テクノロジー・アセスメントの手法の一つ。かつてアメリカで実施された「コンセンサス開発会議」を換骨奪胎し、1987年にデンマークで始まった会議の方法。現在までに、世界の約20カ国で実践されている。具体的には、15~20人程度の一般市民(市民パネル)が実施主体によって選出され、遺伝子工学のような特定の科学技術のテーマについて6カ月程度の学習・協議の後、その利用等についての意見を記した文書(コンセンサス文書)を作成する。文書の準備過程では専門家から成る専門家パネルの説明などを聞くが、専門家はコンセンサス文書の作成には原則として関与しない。日本では、97~98年、遺伝子治療の是非をテーマにコンセンサス会議を科学技術社会論研究者が試行したのが最初である。2000年には、農林水産省の外郭団体が遺伝子組み換え作物についてのコンセンサス会議を実施した。また、06~07年には、北海道が、遺伝子組み換え作物の栽培についてのコンセンサス会議を行政として実施している。コンセンサス会議に対する評価は専門家・市民ともに一般的に高く、双方向コミュニケーションの一手法として価値がある。ただし、テーマとして向き不向きがあり、コンセンサス会議が開催される国家のサイズにも左右される。また開催主体によっては会議の正統性に疑義が生じる場合がある。デンマークでは、議会の下に設置された独立機関DBT(Danish Board of Technology、2012年に財団化)が実施主体となっている。09年9月には、DBTの呼びかけの下に、地球環境問題を主題として、世界の主要国が同時にコンセンサス会議を開催して交流するWWViewsという企画が実施された(日本は京都で開催)。参加型のテクノロジー・アセスメントとしては、05年にイギリスで開催されたナノジュリー(ナノテクについての市民陪審)も注目を集めている。このような取り組みの一方で、過度に市民参加の重要性を強調することに対しては、科学論から批判的な見解も出始めた(科学論の第三の波)。ただし、上記DBTなどが、より専門化志向の意思決定にも取り組んでいることは忘れられがちである。