同じ難易度の試験問題を作るのは技術的に難しいが、異なる試験の点数を比較したいことがある。そこで平均点とバラツキ具合をそろえれば比較可能と考え、偏差値が生まれた。偏差値は得点の分布状況を「平均50、標準偏差10」に直して算出する(→「平均/分散/標準偏差」)。
ある試験の平均がmで標準偏差がσのときのA君の得点がaならば、A君の得点の偏差値は次のようになる。
標準偏差σの分布を標準偏差10にするため、σで割って10を掛けているのである。
偏差値は、同じ母集団(→「統計学」)の標本が別の試験を受けたときの標準的位置を近似的に示すものである。違う母集団、例えば理系と文系、私立系と国立系などの偏差値を比べるのは、体重と身長の数値を比較するようなものといえる。
しかし、偏差値は、過信しては困るが、便利なことは確かである。文部科学省がよく引用するTIMSS(Trends in International Mathematics and Science Study 国際数学・理科教育動向調査)の得点も、1000点満点で平均を500点にして標準偏差100になるように換算している。つまり、「偏差値」という表現は避けているが、偏差値を用いているのである。結局、「偏差値(教育)反対」の主張は、多くの場合「試験反対」の意味になっている。