特に、機械で一定の値になるように作った生産物のデータの分布は、正規分布になることが知られている。このことを利用して、不正を見破った逸話「パン屋の不正」が知られている。
戦時中のドイツで、パンが配給制になったときのことである。検査のために運ばれてくるパンの重さに疑問を抱いた検査官は、パン屋に対して「パンの配給は毎日200gのはずなのに、あなたのパンを製造する機械は軽く作るように調節しているのではないか」と警告した。それに対して、パン屋は「機械を調節しなおします」と答え、翌日から、検査のために届けられるパンは、すべて200gを超えていた。しかし、検査官はそれでも、このパン屋の機械が以前と同じようにパンを作っていることを見破った。
その根拠は、図「パン屋の不正」にてわかるように、届けられたパンの分布曲線が警告をしたときの分布曲線の200gを超えた部分と一致したのである。つまり、パン屋は、作ったパンのうち200g以上のものだけを検査官のところに提出していたことがグラフからわかったのである。
なお、この逸話の検査官の個所は、さまざまなバリエーションで語られている。中には「数学者・ポアンカレが丹念に表を作った」というものもあるが、これは少し疑わしい。