17世紀までは、天体は球形であり、円の軌道を描くものだった。R.デカルトは、それを少し変化させた渦動説(Cartesian Vortex)を唱え、すべてを渦の運動に帰着した。しかし、新たに登場した望遠鏡の観測結果と火星と水星の軌道は合わなかった。
決着をつけたのはI.ニュートンである。彼はデカルトらによる座標を用いて軌道を式で表して、デカルトの説を退けた。結局、ニュートンによって、すべての惑星が太陽を一つの焦点とする楕円軌道にあることが示された。しかし、円運動の説は、多くの天体で間違いだったわけではない。火星と水星は楕円としか言いようがないが、ニュートンの計算でも、当時の他の惑星の軌道が、楕円ではあるが、ほとんど円とみなしてよいことが示されたのである。
1986年1月28日に発生したアメリカのスペースシャトル「チャレンジャー(Challenger)」の事故の数日後に、ときのR.W.レーガン大統領は「この事故を乗り越えて、近い将来、必ず人類は宇宙の果てまで行くことができるだろう」と演説した。しかし、「宇宙の果てに行く」のは不可能である。それは技術的な問題ではなくて、宇宙の構造による。宇宙には「果て」がないからである。果てがないといっても、宇宙は無限ではなく、それは球面とみなすことのできる地球の表面を考えてみればよい。
昔の人々の多くは、地球は平らで、「その果てでは、海の水が滝のように落ちているのだ」と考えており、実際、そのような図も残っている。C.コロンブスが航海に出た理由の一つは、地球が丸いことを実証するためだった。西へ西へと進んで、実際のインドとはかけ離れた現在の西インド諸島にたどり着き、当時の東の果てだったインドにたどり着いたと思い込み、「ここはインドだ。やはり、地球は円かった」と狂喜した。だから、インドとかけ離れた場所なのに「西インド諸島」などと呼んだのである。
同様に、宇宙も同じ構造かもしれない。仮に、現代の技術をはるかに超え、瞬時に思うところまで行けるロケットがあったとする。そのロケットでひたすらまっすぐ突き進むと、どの方向に進んでも地球に戻ってくることになるかもしれない。つまり、宇宙が三次元球面だとした場合に、そうなることになる。