集合は、現代数学のもっとも基礎の概念である。当初は、「そこに入っているかどうかの判定ができる、ものの集まり」を指していた。たとえば、1以上で6以下の整数の集合は、この条件をみたす整数の1、2、3、4、5、6で、これを集合の要素という。この集合を表すには二つの方法がある。一つは、これらの集合の要素を{ }の中に並べて書く外延的定義(extensional definition)で、
{1,2,3,4,5,6}
とする。もう一つはその集合の要素がみたす条件を{ }の中にかく内包的定義(intensional definition)で、この定義で先程の集合を書くと、
{xは整数|1≦x≦6}
となる(xは整数で、1≦x≦6をみたすものという意味)。
外延的定義のほうが具体的ではっきりしているが、あまりに数が多いときは内包的定義を用いるのが普通である。また、「判定ができる」とは、次の意味。例えば、{aは小さい自然数}というのは集合とは認められない。「小さい」の判定が人によって違うからである。この理由によって、主観によって変わる「頭の良い人の集合」、「美人の集合」などはあり得ない。これが、「今回のテストで80点以上取った人の集合」となれば、きちんと判定ができるから、集合となる。この集合の定義は、パラドックスが起こらぬように慎重に考えられた。しかし、そのあともいくつものパラドックスを生み出すことになる。