たとえば、1以上で6以下の整数の集合は、{1,2,3,4,5,6}で、要素は六つと有限である。これを有限集合(finite set)という。要素が10100個でも、数えられる限り、有限集合である。これに対して、19世紀末にG.カントールが要素を無限個もっている「無限集合」を導入し、いくつものパラドックスが生まれた。まず、「無限個のパンがあれば、すべてのパンを配った後で、どんなに人が増えても大丈夫だ」という結論が出てくる。今、無限個のパンをそれぞれ一人一人に配ったとする。わかりやすいように、そのパンに1番、2番、3番…、というように番号をつけておく。配り終わったあとに、別の一人の人が現れて、「パンを欲しい」と言ってきた。もう、すべてのパンを渡し終えているが、誰もまだパンを食べていないとき、どうするか。
これは、全然心配ないのだ。その人には1番目のパンを渡し、1番目だった人には2番目のパンを渡して、2番目だった人には3番目のパンを渡し、3番目だった人には4番目のパンを渡し、……、n番目だった人には(n+1)番目のパンを渡し、……とやっていけば、また全員にパンが渡る。さらに、パンを配り終えたあとに一人だけでなく、今いる人達と同じ数(やはり無限)の人間が来ても、パンは不足しない。これは、無限集合だから、トラブルを無限に先送りできるため、成り立つのである。それゆえ、L.クロネッカーのように無限集合を認められない人がいても不思議ではない。