確率に関するパラドックスの一つで、アメリカのゲームショー番組「Let’s Make a Deal」の司会者の名にちなむ。実際にはパラドックスではないのだが、多くの数学者も間違えたものなので、パラドックスという呼び方は正当だろう。このショーでは、最後の賞品が3個の箱A、B、Cのうちの1個に入っている。賞品を受け取りたいチャレンジャーは、まずそのうちの1個を選ぶことができる。このとき、選ばれた箱をAとすると、チャレンジャーがAを選んだあとで、モンティが残りのBとCのうち、当選でない箱(この場合、Cとする)を開けて見せる。これで、AかBに当選の札が入っていることがわかる。そして、「さあ、今ならAとBを取り替えてもかまいませんよ」と言う。このとき、次のどちらが正しいか。
(1)確率は同じだから、そのままAを続けてもよい。
(2)Bに乗り換えるほうが、当選の確率が高い。
この問題の考察をコラムで扱ったM.サヴァントは、確率が2倍だからBに乗り換えるべきだと主張した。ところが、それに対して、著名な数学者を含む1万通の非難が殺到したといわれる。組み合わせ理論で「神」といわれるP.エルディッシュも、最初はサヴァントが間違っていると言ったそうである。直観と結論が異なること著しいが、その説明は、さほど難しくはない。まず、Aを選んだ時点で、当選確率は1/3、そのあとCがはずれであると分かった時点で、チャレンジャーがBを選ぶとすると、当選くじがAに入っていた場合(当選確率1/3)以外が当選するわけだから、その確率は1-1/3=2/3となる。だから、確率は2倍になる。エルディッシュもコンピューターでシミュレーション計算した結果を見せられて納得したそうである。