通信と制御と統計力学の問題を、機械も生物も含め一括して研究する学問。アメリカのN.ウィナーが著書『サイバネティクス』で導入した。これは通信、計算、自動制御などの研究と生物学の神経生理学などの成果を総合し、相互促進するための全体的展望であって以後の情報科学、ロボット工学、自己組織化論などの礎石となった。
サイバネティクスは、デカルト、ニュートン以来の近代科学と性格がやや異なる。例えば、生命や情報に重きをおき、デカルト的な物と心の二元論に再考を促した。また、決定論、機械論に代わり、確率論的予測理論、目標値と達成値の違いを縮めるためのフィードバック制御理論(feedback control theory)を提示している。さらに脳や生体などの自然システムと人工の機械システムとの関係、自動機械の可能性と限界の考察を通じ、認識論、人間論、社会科学、文明論などへの示唆も大きい。