地面と上空との間には常に温度差があるから、その間にはさまれた大気は熱平衡状態から離れた状態に保たれている。このような開放系(より正確には非平衡開放系 non-equilibrium open system)は、一般に外部から取り込んだエネルギーや物質を変質させ、その過程で発生するエントロピー(→「不可逆過程」)とともにそれらを排出し続ける物質系である。化学反応においても、反応物質を補給し続ければいつまでも化学平衡に達することができないから、非平衡開放系となる。エントロピー増大則(principle of increase of entropy)によれば物質の秩序は失われる一方に見えるが、開放系では一見これに矛盾して自発的な秩序形成、すなわち自己組織化現象が起こる。開放系では無秩序化の原因であるエントロピーはたえず外部に排出され続けるので、ここに何らの矛盾はない。