ニュートン力学によれば、粒子があるポテンシャル障壁を乗り越えるためには一定以上のエネルギーをもっていなければならない。しかし、量子力学によればそれ以下のエネルギーでも有限の確率で壁をすり抜けることができる。これをトンネル効果(tunneling effect)と呼び、この機構により絶縁体の膜という障壁をすり抜ける電子の流れをトンネル電流と呼ぶ。この効果によって、絶縁膜をはさんだ二枚の超伝導薄膜間をクーパー対(→「超伝導」)が移動することも可能。この現象をジョセフソン効果(Josephson effect)と呼び、それを利用した超伝導素子がジョセフソン接合素子(Josephson junction device)である。走査型トンネル顕微鏡はトンネル電流を用い、物質表面の原子を個別に分解して見る高分解能の顕微鏡で、探針先端から試料に向けて出るトンネル電流の強さが、間にある真空という絶縁体の厚みに敏感に依存することを利用する。これにより試料面の局所的な高さが正確に分かり、試料面を探針が走査することで原子スケールでの凹凸パターンを観測できる。