量子ホール効果は、電子の電荷e(-1.602×10-19C〈クーロン〉)やプランク定数(Planck constant h=6.63×10-34J・s〈ジュール・秒〉)などミクロな基本定数が電圧というマクロな測定量に現れる現象である。電子を二次元面内に閉じ込められる半導体デバイスで、温度1K以下で試料面に電流iを流し、それと垂直に強磁場をかけたとき、両者に垂直な方向に電場Eが生じる。電流と磁場に垂直な方向に電場が生じること自体はホール効果として古くから知られているが、通常のホール効果では、ホール伝導率i/Eが磁場に反比例して変化するのに対し、上記のような状況ではこれがe2/hの整数倍のところで平坦な階段状となる。量子ホール効果は、強磁場によってランダウ準位(Landau level)に量子化された電子群が半導体内の不純物のために局在化すると、まったく電流に寄与できなくなることと関係する。デバイスによってはホール伝導率がe/hの分数(1/3、2/3、1/5など)に量子化される分数量子ホール効果(fractional quantum Hall effect)も起こる。電子が分裂したかのようなこの現象には電子間の相関(→「強相関電子系」)が本質的な役割を果たしていると考えられている。