固体内の電子は、クーロン反発力のために互いに相関しながら運動している。このような電子相関(electron correlation)が特に強い物質を強相関電子系と呼び、適当な条件下で新しい物性を示すことから関心を呼んでいる。高温超伝導やモット絶縁体(Mott insulator)などはその重要例である。この種の物質中では、電子は他の電子を避けるためにきわめて動きにくくなっており、それが有効質量の増大とみなされ、ときには通常の金属における有効質量の数千倍にも達する。このような重い電子系(heavy-fermion systems)が示す超伝導の性質は、通常のものと非常に異なると考えられる。また、モット絶縁体は電子相関のため電子が局在化して走りまわれなくなった状態に対応するが、電子の総数を減らすと動きやすくなり、突然金属に転移(モット転移 Mott transition)する。このような相転移は系の量子力学的構造が定性的に変化をするために起こることから、量子相転移(quantum phase transition)と呼ばれる。重い電子系の量子相転移には種々の磁気相転移も知られている。