ボーズ粒子(ボゾンともいい、同一の量子状態を何個でも占められる粒子→「四つの基本的力」)からなる気体を十分冷却したとき、ある温度以下で個別粒子の最低エネルギー状態(基底状態)にマクロな個数の粒子が落ち込む現象。基底状態に落ち込んだ粒子集団は凝縮体(condensate)という。光子気体の統計に関するS.N.ボーズの理論に触発されたA.アインシュタインが1920年代にこの現象を予言した。ボーズ粒子系である液体ヘリウム4が類似の現象を起こすことは知られているが、アインシュタインの当初の予言は理想ボーズ気体に対する凝縮現象であった。久しく待ち望まれていた後者の検証は95年にアメリカのC.E.ウィーマン、E.A.コーネルがルビジウム原子気体を用いた実験で達成、ついでドイツのW.ケターレもナトリウムを用いた独自の実験で達成し、3人ともに2001年ノーベル物理学賞を受賞した。1998年には理想ボーズ気体に最も近い水素原子気体でも実現された。これらの実験では、気体原子を磁場で捕捉し、原子のうちエネルギーの高いものを選択的に除去する蒸発冷却法(evaporative cooling)により凝縮温度(水素原子気体の場合は約50μK〈マイクロケルビン μは10-6=100万分の1。1K=-273.15℃〉)が実現された。凝縮状態では超流動(superfluidity)性が現れるほか多くの興味深い性質が期待される。例えば、凝縮体は光に対して異常に大きな屈折率をもち、凝縮体中の光の進行速度が秒速17mにまで落ちることがナトリウム原子気体で報告されている。